第53章 本気で想う大切な人
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「まじで伏黒って怖いわー」
「黙れ」
何故か呪霊に目をつけられた俺は、虎杖達よりも痛手を負った。
別に八乙女さんを恨むとか、そういうことではないが、この間の交流会の傷が癒えないというのに、怪我が完治するのはいつになるのだろうか。
「でも、あーんして貰って良かったなっ」
「よくない。お前…俺がなんで不機嫌か分かってるか?」
動くと痛いけれど、動けない訳では無い。
まして、食事くらいなら1人で食べられる。
(…くそっ)
知り合いの前であんな羞恥を晒したことに苛立っている……わけではない。
ならば、何に苛立っているのか。
「…もしかして、マジで好きじゃないの?」
「そう言ってんだろ」
「そんじゃ、俺らめっちゃ下世話じゃん」
「そうだよ…!」
俺は八乙女さんのことを好きなわけじゃないと、何度言えば伝わるのだろうか。
『美味し?』
「…どした?」
は?
「おーい。水零すぞ?」
「あ、ああ…」
なんだこれ。
突然のフラッシュバック。
「でもまぁ、八乙女さん達って最強のカップルだよなー。五条先生は普通にカッコイイし、八乙女さんも普通に可愛いよなー。あ、八乙女さんの高専時代の写真見たことある?」
「…何個かは」
「あれは?花魁みたいなやつ」
「知らん」
肌が白くて髪は濡れ羽色。
1歩違う路線だったら日本人形のようなのに、それとはかけはなれた美しさを持っている。
「えっと、確か五条先生が……あ、これこれ!やばくね?」
虎杖が勝手に見せてきた写真には2人の女性が。
「こっちが家入さんで、こっちが八乙女さん!めっちゃ色っぽいよなー」
八乙女さんは桃色の髪に髪飾りを刺し、目元をキツめにメイクアップされ、見返り美人というのか、肩を少しはだけさせた着物を抑えながら、カメラを睨んでいた。
「…そんな凝視して。送ろうか?」
「…いらない」
いらないと言ったのに、虎杖は話を聞かずに送ってきて。
「八乙女さん達には内緒なっ!」
別に興味はないのに。
何故か保存してしまう自分がいて。
何が何だか…自分の気持ちが分からなくなった。