第53章 本気で想う大切な人
「七海ちゃん、──ちゃんが死んだところ見てたよね」
『ええ』
「…あれ、誰が殺したように見えた?」
『…どういうことです?』
「難しく考えないで。やっぱり……悟?」
試されてると思ったのか、七海ちゃんの回答は少し遅かったけれど。
『ええ。五条さんだと思ってましたが』
「だよね。ただ確認したかっただけ」
『…』
「あ、別に誰も責めないよ?今の世じゃ、──ちゃんは間違いなく害だったから」
何故か七海ちゃんの顔が見たくなって。
無性に不安になって。
勝手にビデオ通話に切りかえた。
『何です、急に』
「顔見たい」
これまた悩んでいるのか、しばらくお互い無言を貫いたが、最終的に七海ちゃんが折れてくれた。
『…そんなに見られると恥ずかしいのですが』
お風呂上がりなのか、少し髪が湿っていて。
私の想像した通りの不貞腐れ顔だった。
「うん、七海ちゃんだ」
『はい?』
「私、七海ちゃんに嫌われたら生きていけない」
『…そうですか』
七海ちゃんは私を受け入れてくれる人のひとりだから。
『……それだけですか?』
「え?うん。ちょっとだけ七海ちゃんがどんな顔してるのかって、不安になった」
やはり顔を合わせるのはとてもいい。
七海ちゃんはふっと笑って、私の目を見た……ような気がする。
『千夏さんが千夏さんでいる限り、嫌いになりませんよ』
「…難しい。もっと簡単に言って?」
『無理です。これが一番簡単ですから』
七海ちゃんは昔から話が難しい。
私の周りにいる人は頭が良いので七海ちゃんの話についていけるけど、私には少し厳しかった。
『…眉間。シワよってますよ』
「七海ちゃんが難しい話するから」
『してません』
「したよ」
『もう少し勉強なさっては?』
「…」
『…そんなに嫌ですか』
「嫌」
『…素直ですね』
今夜は寝られなそうだったけれど、少し落ち着いてきた。
今なら寝られるかもしれない。
「話、付き合ってくれてありがとう」
『いえ。何かあったら連絡を』
「うん。ありがとう」
体は疲れているはずなのに、目を瞑ると嫌な想像ばかり浮かんできて、目を開けてしまう。
(……よし、戻ろう)
悟の顔を見ればどうにかなるかもしれない。
そんな希望を抱きながら、エレベーターのボタンを押した。