第7章 運命
いない。
五条がいない。
血溜まりを残して、五条本体が消えた。
誰かが五条の死体を移動させたか。
あるいは…。
「千夏」
声に導かれ振り返ると、さっきまで横たわっていた五条が立っていた。
ゾンビのように見えるが、確かに生きている。
何故?
「呪力ダダ漏れ。あ、俺のせいか。あひゃひゃ」
硝子が治療したなら、ここに硝子がいるはず。
でも、ここにいるのは私と五条だけ。
「悪いけど、時間が無い」
五条が近づいてくる。
それに合わせて後ろに下がる。
「ほんと、に、生きてる?」
「生きてるに決まってるだろ」
安堵のせいか、体が重くなる。
動けない。
「固まった?ラッキー。今は手加減できる自信が無いからな」
トン。
そんな軽い衝撃がおでこに乗った。
そして、かくんと膝が折れるのと同時に。
意識を失った。
『千夏は弱い。くっそ弱い』
『うっ、ぐ…うっ……』
『泣くなよ』
『だって……』
『泣き虫。いつもみたいに呑気に笑ってろよ。それが千夏の取り柄だろ』
『千春が居ないと、やぁだ……!』
『ったく。じゃあ、ずっと一緒にいてやんよ』
『…ずっと、一緒?』
『うん、ずっと一緒』
『やったぁ!』
『…凄く、辛いと思うぞ』
『…?』
『まぁいいや。馬鹿な千夏に言っても理解できないだろうから、これだけ伝える』
────愛してるよ────