第53章 本気で想う大切な人
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髪と体を洗って、軽くシャワーで流す。
シャンプーとボディーソープは、多分どこかのいいやつだった。
洗面所で貸してくれたルームウェアに袖を通し、タオルで髪を拭く。
目の前の鏡に移る自分に目を向けてみれば、小さな笑いが漏れた。
(マジかぁ…。気づいちゃうのね、あの子)
僕的にはいつも通り、というかいつもより元気に振舞っていたつもりなのに。
「お風呂上がりました〜」
ドライヤーを終えてから洗面所を空け渡す。
「ん」
ソファの上で足を冷やしていた千夏が、今度は自分の番だと言うようにお風呂セットを持って立ち上がる。
「……あれ、風呂上がりなのにそれすんの?」
分かりやすく2度見した千夏は、僕のアイマスクに指を向ける。
(こんなモノしなくてもバレてるし……まあいっか)
耳元に指を入れて、そのまま上に持ち上げて頭を抜く。
僕は何も無いような顔で、そのままベットに腰掛けた。
「…」
チラッと千夏を見れば、まるでこの世の終わりのような顔をしていて。
あまりにも深刻そうな顔をするものだから、見ているのがバレないように顔を隠して笑った。
「じゃあ…お風呂行ってくる」
「うん」
「寝てて、いいよ」
「待ってる」
「…分かった。秒で出てくる」
秒では無理だろ、と思いながら、千夏の長い髪を眺めた。
いつまで伸ばす気なのだろうか。
『髪の動きって自分じゃコントロール出来ないじゃん?だから前に千春がね、『髪1本でも触れられたら、死んだと思え』って言って。その指標として伸ばしてるの』
早く切りたがっていたけれど、千春の助言が元ならなかなか切らないだろう。
「上がった!!」
「早。びちょびちょじゃん」
「だって…」
「ドライヤー持ってきて」
「でも悟…」「いいから」