第53章 本気で想う大切な人
「やっぱり恥ずかしいよ」
「じゃあ飛ぼうか?」
「それはもっと目立つから嫌」
てくてく。
何故か悟は私たちの泊まるホテルを知っていた。
「そんなに警戒しなくていいよ」
「え?」
「…だから、そんなに周り見なくてもいいよって」
私が周りを警戒していた?
いつ?
「うん、分かった」
とりあえず返事をして、私は悟の肩から後ろを見続けた。
「…」
血液が熱くて堪らない。
「薬局でテーピング買っていこう」
「持ってるから大丈夫」
「用意がいいこと」
「…別に。ホテルで氷だけ借りる」
「そうしよう」
悟がいるから大丈夫。
分かってる。
「ねぇ」
「ん?」
「どうして…。どうして、──ちゃんは最後にあんなこと言ったのかな」
「あんなことって?」
「なんで、って。最後にそう言ったの」
もし、今誰かに襲われても、悟に適うような人はいない。
「千夏が近くにいたのに、どうして僕が攻撃できたのって疑問かな」
「え?」
「え?」
悟は術師最強なのだから。
「あれ、悟がやったの?」
「あは……分かってた?」
だから、もし突然領域内に閉じ込められても
「分かるって…何を?」
「…多分、皆僕がアイツを祓ったと思ってるよ」
「嘘だ」
「本当」
悟がいれば何も怖くない。
「…鈴木ちゃんは術師辞めて正解だったかもね。彼女の術式は強すぎる」
「ウルハ…?千春じゃなくて?」
「千春が動けたのは鈴木ちゃんの術式のおかげ」
「…難しい」
「鈴木ちゃんの術式をちゃんと理解してないと難しいかもね。後で教えるよ」
先程から後ろを着いてくる老人。
目的地が近い、または同じであることを信じたい。
「…まぁ、何でもいいけど。やっぱり──ちゃんは……私との未来を望んでくれてたよね」
「うん。もしかしたら、最後に呟いたのはそれに対する疑問だったのかも」
仮に、今襲われたとして。
まず……
「千夏」
「何?」
「落ち着いて」
「落ち着いてるよ」
「どうしたの?」
「だから、何が?」
「…」「…」
ふう、と。
悟の肩に顎を乗せた。
「…悟より強くなりたい」
何気無く漏れたのは本音だった。