第53章 本気で想う大切な人
怪訝、不可解。
そんな顔で大きな体を見つめると、悟は続けて言う。
「誰か助けてくれないかなー」
勿論、棒読みで。
「何してるの?」
「疲れて体が動かなーい。誰か介抱してくれないかなー?」
いつもの訳が分からぬ芝居が始まったか?
そんなことを考えながら眉をひそめ、悟をヤバい奴認定したウルハの旦那の絶妙な顔に目を向けた。
「…馬鹿な真似してないで」
「だーれーかー…あぁあぁ」
分かってるでしょ?
私と貴方は簡単に混じってはいけないの。
「…もういい。七海ちゃん、適当に捌いて」
貴方の気まぐれに付き合ってはいけないの。
分かってるでしょ?
眉間を指で指圧し、手で大きな体を払う真似をした。
規則、規律を重んじて、冷静沈着に物事を進める七海ちゃん。
そんな人だから、というか、近くにいたから、悟のことを纏めて欲しかったのに。
「…五条さん、貸しですよ」
そんな一言に、私は指圧を止めて顔を上げる。
「え、七海ち…」
「生憎、私は先程の領域内で痛手を負ってしまったので、この無駄に大きい邪魔な体を運ぶことはできませんね」
「…」
「申し訳ありません」
律儀に頭まで下げて。
「信じらんない…」
「戦闘で怪我を負わないのはこの人か、貴女くらいですよ」
「そうじゃなくて…」
何が面白くて、七海ちゃんは悟の芝居に付き合っているのか。
この人は本当にあの七海ちゃんなのか。
助けを求めるように、その隣のウルハに目を向ける。
2秒ほど目を合わせると、ウルハはそのまま声を上げる。
「いたたたっ…!あー、突然お腹が…あー痛いなぁー」
何だ、この茶番は。
ウルハは片手でお腹をさすり、これまた抑揚のない声で言葉を続ける。
「私も五条先輩の介抱、無理そうだなぁ。誰か他の人がやらないと〜…」
「あー、早くしないと活動限界を迎えてしまう〜!」
これまた、ウルハの旦那が自分の嫁を不可思議な目で見つめている。
そして私も、この状況に戸惑っていた。