第52章 不如意
──ちゃんは私の体を押して倒れ込んだ。
体幹はある方だと思っていたけれど、足まで執拗に絡められた今、私はカカシのように自由が効かない。
けれど。
パシュ────
──ちゃんの体は簡単に切り刻まれる。
「な、んで…」
──ちゃんは最後に、私への愛でも、祓われたことに対する不満でもなく、純粋な疑問を…そのようなことを呟いた。
「安心しろ。人間のことは人間の分野で裁くから」
消えゆく存在に…悟はそんな言葉を投げた。
(…え?)
自分が盾となったこと、一瞬にして友達が消えたこと。
あまりに突然のことで、ことの大きさを受け止めきれない。
手に残る不気味な温もりが…確かにそこに温もりがあったのに。
今は跡形もなく質量そのものが消えてしまったのだ。
「あの子のこと、ちょっと頼んだよ」
私たち傍観者の視線を一気に集めた五条先輩は軽くそう言って、例の殺人犯の元へ向かった。
「ッチ…!」
釘崎さんがイラつきを表しながら、八乙女先輩の元へ走る。
先輩は腰を落としたまま自分の手のひらを見つめ続け、釘崎さんに肩を抱かれるとハッとしたように笑顔になる。
「…あれ」
私はそんな八乙女さんを指さしながら、七海先輩を見上げた。
あの笑顔…笑い声…。
わたしはそれらを知っていた。