第52章 不如意
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「まず…皆、ごめんなさい。楽しい旅行中だったのに…私の我慢が効かなかったせいで…」
「そういうの要らない。誰も責めないっつーの」
これが野薔薇なりの優しさなのだろうか。
だから、私はこの子を大切にしたいのだ。
「…えっと、今回のことを理解するには、私の過去を知らないと多分…分からないから話すんだけど、その、あまり楽しい話じゃないから、聞きたくなくなったら聞かないでいいからね」
私自身も思い出したくないのだ。
だから、できるだけ手早く話を終えたい。
「まず、私の生みの親は直ぐに私を捨てて、育ての親であるしーさんって人が私を育ててくれた」
早速、私の過去を知る人物と、知らない人物の表情に差が出る。
「その時、一緒に育った姉妹がいて…千春、千秋、千冬って言って…春夏秋冬が揃ってたの。それで…」
春夏秋冬で色々なことを経験してきたはずだけれど、あまりこと細かくは覚えていない。
千春は別として、千秋と千冬との大部分の記憶は私の秘匿死刑が行われたとされるあの辺である。
けれど、小さい頃から…ずっと、ずーーっと、染み付いている感情があって。
それは千春、千秋、千冬…3人がとても大好きだったこと。
「それで…」
当時の私は死を理解していなかったから、特に苦しさに揉まれることはなかった。
ならば、私はいつ……こんなに衝動的で醜い感情を抱いたのだ?
「私が3歳くらいの時。しーさん、以外は…」
千秋と千冬の死を理解したのはいつだったか。
「みんな、殺されたの」
悟、恵、野薔薇。
3人を除いて、皆が体を反応させた。
そして、私が腕を伸ばして指を指すと────
「そいつに、ね」
皆が皆して、そちらを向いた。