第52章 不如意
”…こんにちは”
その声が何度も繰り返される。
”…こんにちは”
その顔は確かに歳をとっていて。
声も少しばかりしゃがれていた。
”…こんにちは”
でも、どこをとっても────
「こんにちはぁ〜」
「あ、こんにちは」
「すっごく綺麗に整えられた木ですねぇ」
「はは。ありがとうございます」
そんな時に、とある女の人が男に声をかけた。
しかし、少しすれば女の人が女の”人”でないことが、いくら私でも明らかになる。
黒い厚底ブーツにふりっふりの白いレースがついたゴスロリ服。
これまた白いレースが飾られた可愛らしい傘をかざして…。
「…ふふっ」
含んだように振り返り笑ってきた彼女はまさしく────
「あのぉ、参拝に来たんですね、私。少し手伝ってくれませんかぁ?」
「手伝う…ああ、方法ですか」
「そんな所ですぅ」
彼女の胸元の大きなリボンが揺れる。
(…なんで?)
今、この場は、この状況は…ある意味奇跡だ。
存在しえない人が…人達が揃いも揃ってここに集っている。
急に足に力が入らなくなって、私はその場に蹲った。
以前から胸を押さえていたことも要因なのだろう、男が様子を見に来た。
「大丈夫ですか?」
金槌で頭を殴られているよう。
私の心配をするのであれば、今すぐここから消えて欲しい。
このまま黙って俯いていたら、体に手を伸ばされそうだ。
力を振り絞って顔をあげれば、あの顔が目の前に。
「凄い汗…」
「…」
この男と…昔の男の顔が交互に写る。
「動けますか?一旦日陰に…」
「すとぉーーーっぷ!」
男の背中にゴスロリが体を寄せて腕を回す。
「この子の体に触らないで、おじさん♪」
「ちょ…でも」
「大丈夫!この子を苦しめてるのはぁ…」
そして、その手で男の首を掴んだ。
「お前だよ」