第52章 不如意
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(…はぁあーー。意外と暑いなぁ)
私の中で夏という季節は、自分の誕生日周辺を指す。
夏も終盤だと思っていたから舐めていたけれど、中々に本日は気温が高い。
自前の扇子と日傘を用いながら、昨日とは逆の方向を観光する。
こちらには目立った観光名所はないけれど、予定無く彷徨う観光も好きだった。
朝ごはんはホテルで食べたけれど、途中のカフェでよく分からない(失礼)美味しいスイーツを頂き。
ハイビスカスを1つ拝借して、近くの海辺を散歩。
最後には歩いて数分の神社に身を寄せた。
(2礼2拍手1礼…っと!)
義務ではないけれど、こういう行動にも意味があるんだよ、と。
こういうマナーを何も知らない私にも優しく教えてくれた悟。
(…あ。鳥居の前で1礼するの忘れた)
…この歳になっても常識が身について居ないけれど。
日々成長していると信じたい。
「お疲れ様です。進捗はどうですか?」
坊さんだか、行司さん(違う)だか知らないお偉いさんの声がする。
普段、坊さんは何をしているのだろうか。
縁側でお茶を飲んでるイメージが…
「ああ、お疲れ様です。いい感じですよ」
え?
「いやいや…毎月ありがとうございます」
「こちらこそ。何年もやってると愛着が湧いちゃって…」
な…
振り返ったらいけないことは頭でわかっている。
千春がいても、そう言われるはず。
でも。
「そうですか。ひと段落着いたら……ん?」
あまりに凝視してしまったからか、坊さんが私を見て一礼する。
けれど、私に対応する余裕はない。
大きく鼓動する胸を抑えて、それでも足りなくて、左の乳房を下着越しに鷲掴みにした。
「どうかなさいましたか」
「…い、いえ。き…になさら、ず」
お願い。
落ち着いて。
「…えっと。まぁ、ひと段落着いたらお茶にしましょう」
「そうですね。あ、今からでもいいですか?」
「勿論です。準備してきますね」
薄緑色のツナギと帽子を身につけた男の人が、脚立から降りてきた。
「…こんにちは」
ニコッと挨拶をした男は、自分の道具をまとめている。