第7章 運命
「嘘…だ、ろ」
半開きの目。
あんなにもキラキラと輝いていた瞳に生気は感じられない。
頬に手を伸ばせば、生ぬるい液体が手を赤く染め、残酷な現実を突きつけてくる。
「ねぇ、五条…。起きて、ねぇ…」
震える声。
震える手。
落ち着け、千夏。
今すべきことはなんだ。
『千夏、どうだっt…』
「硝子!お願い、早く来て!早く…、お願い…!」
『ちょ、何?何が…』
「鳥居の下。早く来て!」
硝子に連絡はした。
大丈夫。
硝子がいれば、五条は助かる。
けど、硝子が来る頃には手遅れかもしれない。
試して、みるか。
「……反転術式」
『ひゅーっとやって、ひょいっだよ。分かんないかなー』
「何でっ!出来ないの…!」
今まで何度も試した。
できないことは分かっていた。
けど、やらずにはいられない。
「お願い、力を貸して…」
反転術式はあの五条でさえ使えない。
”あの”五条でさえ。
「……誰だ」
五条にここまで傷をつけれる人物。
そんな人がこの世にいたとは。
一体、どんな人間だ。
顔を見せてもらわなくては気が済まない。
「あは…。ごめん、五条。やること見つけちゃった」
落ち着け、千夏。
さっきとは違う落ち着きを持て。
無意識に飴缶から、飴を取り出す。
そして、舐める。
けれど、何の抑制力にもならなかった。
この時、八乙女千夏はニタニタと笑っていた。
『……千夏、本当にいいの?私なら五条悟を治…』
「きゃは……楽しみだなぁ」
歯止めの声は八乙女千夏の耳には届かない。
彼女が考えていることはひとつ。
五条悟を救うために、戦うことだけ。
復讐のことしか、考えていない。