第52章 不如意
「男は?」
五条先輩は冷たい声で八乙女先輩に尋ねた。
「もう大丈夫」
八乙女先輩は呪霊の頭部を持ち上げて、優しく抱き抱える。
「──ちゃん…」
「千夏」
「…」
「そいつだけは生かしておけない」
五条先輩が頭部を奪おうとする。
「ざっけんな!」
しかし、以外にも反発したのは呪霊の方だった。
「私は千夏ちゃんと遊びたいだけなのに…!」
「周りのことを考えないだろ」
「だって、皆…皆、千夏ちゃんを不幸にするんだ!そんな奴らに生きる価値はない!」
五条先輩は呪霊の髪を掴み取って、無理矢理八乙女先輩から遠ざけた。
「私は千夏ちゃんに何もしてないのに祓われるの?呪霊だから?」
「そう」
「っ…!じゃあ、アイツらは何なのさ!何人も人を殺してのうのうと生きてるやつよりも、私が死ぬべきだって言うの!?はっ、本当に頭おかしいな、お前ら人間は…!」
「…あの男は?」
「…ふふ、そっかぁ。君は知らないんだね」
「答えろ」
五条先輩が知らないのなら、ここにいる誰もがその男のことを知らないだろう。
八乙女先輩と、呪霊以外は。
「じゃあ、私から離れて」
「断る」
「そしたら大好きな千夏ちゃんのこと、一生知れないよぉ?」
「千夏に聞く」
先程から、八乙女先輩は呪霊の体の方をどうにかして運ぼうとしているけれど、あまり上手くいっていない様子。
七海先輩と何やら話しているけれど、2人の顔からあまりいい話とは思えない。
「千夏ちゃん、話さないと思うよ?」
「じゃあお前が話せ」
「じゃあ私から離れて」
「却下」
「もぉ…君はいくつになっても冷たいねぇ」
私はどうにかして手持ち無沙汰を解消したくて。
近くにいた釘崎さん達に話しかけた。
「あの…君達はどうしてあんなことしたの?」
「あんなこと?」
「…八乙女先輩に名前呼ばれて、ほら」
「あーあれね」
虎杖くんが素早く携帯を弄って。
「前もって八乙女さんに指示されてたからさ」
そこに写っていたメッセージは、とても淡白なもので。
”私が名前呼んだら地面割って”
釘崎さんが見せてくれた方には
”釘、空”
これだけだった。