第51章 コイワズライ
「千夏さん?」
「そう」
「好きだよ?何言ってんのさ、七海」
屈託のない笑顔。
「七海だって好きでしょ?」
「…」
「ったく。ね、鈴木さん。鈴木さんも好きだよね?」
「…え、あ、はい、多分」
ああ。
もうダメだ。
羞恥より何より……
幸せな記憶に耐えられなかった。
あんなどん底を味わうくらいなら、こんな幸せはいらなかった。
こんな世界に身を投じたくなかった。
「いやぁ、鈴木さんとの任務も久しぶりだなぁ。前回は伊地知も一緒だったけど、今回は2人だね!」
やめて。
思い出したくない。
「鈴木さんっ!大丈夫!?」
痛手を負ったのは私なのに。
「これ……借りるよ」
どうして先輩が全てを背負うんだ。
「……そっか。使った分だけ運が…。うん、大丈夫!悪運には強い方がなんだよね」
この力で誰も傷つけたくないから、ひとりでいるのに。
先輩は平気で私に絡んできて。
断ることすら面倒で1度受けいれてしまったら、今度は離れて欲しくなくて。
ずっとその明るさに照らされていたくて。
「せ、ぱい……やめ、て」
”先輩、やめて”
「や、」
”嫌だ。やめてよ、先輩!”
先輩がサイを投げた。
投げてしまった。
”くそっ……!”
何度サイに手を伸ばしても、軽く通り抜ける。
地面に落ちて欲しくなくて、受け止めたくて。
それでも、私の手は空を搔くだけ。
「全部20だ…鈴木さんっ、どう!?」
”せんぱい…”
「はぁ、良かったぁ…」
”ぜんぜん、よくない…よくないです”
「呪いは祓ったから。念の為、帰ったら…」
”違うよ。先輩。呪いは祓えてない”
むしろ
”呪いは私の中に────”