第51章 コイワズライ
「あの、七海先輩」
七海先輩は携帯から顔を上げて、首を傾げた。
「何ですか」
「…灰原先輩って、八乙女先輩のこと好きなんですかね」
これは……かなりきつい。
自分の行いをこうして見るのは、中々羞恥が強かった。
「さぁ。そういう話はしないので」
「…しなさそう」
そういえば、結局灰原先輩は八乙女先輩のことが好きだったのだろうか。
……死人に口なし、考えるだけ無駄か。
「…聞いときましょうか」
「え?別に…そこまでじゃ」
七海先輩は腕を組みかえて、小さく微笑んだ。
本当に微々たる笑みだった。
「応援してます」
「は?」
「…」
「ちょ、先輩!」
「ごめーん、お待たせ!」
そうか。
七海先輩はこの時既に私の気持ちに気づいてたのか。
だから、あの時────
なるほど、過去を振り返るとこういう気づきがあるのか。
「悟、早く帰らないとアイス溶ける」
「そーね。んじゃ、お先っ!」
1歩踏み出した五条先輩はすぐに戻ってきて。
「あ、そうそう。鈴木ちゃん」
「あ、はい」
「いつもありがとね」
「…?」
……へぇ。
この時、七海先輩達はこんな顔をしていたのか。
呆れ顔というか、けれどどこか幸せそうというか。
私はと言えば、五条先輩の意味深な言葉を解読しようと必死だった。
「結局、家入先輩達に何買ったんですか?」
「えっとねー、家入さんにはパイナップル。千夏さんにはプリン!」
家入先輩は家入さんで、八乙女先輩は千夏さん。
「…へぇ」
うわぁ……わかりやすっ、私!
「そういえば」
七海先輩がビニール袋の中を覗きながら、深い響きを持つ声を放つ。
「灰原は八乙女さんのこと好きなの?」
そう、この時だった。
七海先輩の言葉を恨みながらも、灰原先輩の言葉をしっかりと待っていて。
頷かれてしまったらとても立ち直れないと考えている自分の存在を知って。
ああ、私は灰原先輩のことを好きなんだ、って。
気づいたんだ。