第51章 コイワズライ
「あ、鈴木さーん、和田さーん!」
「あ、せんぱーい!お疲れ様でーす!」
…ああ、こんなこともあったっけ。
「これから七海とご飯食べ行くけど、一緒行くー?」
「あ、ウチらも!」
「んじゃ一緒行こっか!」
「はい!」
和田さんに勝手にご一緒することを決められ、無理矢理連れていかれた。
これを始めとして、私はよく灰原先輩とご飯を食べることとなった。
1回目以降は、学校にカップ麺や弁当を持ってきて一緒にゲームをするという、食事よりゲームがメインだったけれど。
「先輩、そっちカバー」
「あ、えっと…おしっ!撃破っ!」
灰原先輩はことある事にハイタッチを望んできた。
聞くと、どうやら癖みたいで、つい手が出てしまうのだという。
まぁ、私は1度も応じなかったけど。
「…八乙女先輩、今日来ると思います?」
「うーん。厳しいと思うなー」
一応、毎日八乙女先輩のことは待っているのだが、最近は部屋に来ることは愚か、ばったり顔を合わせることも無くなった。
「…千夏さん、忙しいからね」
八乙女先輩のことを話すと、毎回この顔をした。
今となってはこの顔ですら拝むことは出来ないけれど、当時の私はこの顔が妙に嫌いだった。
「鈴木さん、明日任務行くんでしょ?」
「…なんで知ってんですか」
「和田さんが教えてくれた」
私にとって、任務を合法的に休むことはおちゃのこさいさいだけれど、灰原先輩に任務の存在がバレてしまっては、何故だかサボることが必要以上に悪いことのように思えた。
「頑張ってね」
そう言って、灰原先輩はゲーム機を片付け始めた。
「千夏さん、言ってたよー。夜更かしは美容の大敵だって」
だからおしまい、と。
私にとって、夜はこれからだと言うのに、ゲームを片付けられて。
きっと目の前の私はそんなことを不満に思っていただろう。
しかし、その不満が変わる────灰原先輩の口から八乙女先輩の名前が出る度に胸がチクチクするようになるのは、そう遠くない話だった。