第51章 コイワズライ
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「鈴木さん!おはよー!」
「…」
「昨日もゲーム?どこまで進んだ?」
ここは、どこだ?
というより―――――
”灰原先輩…!?”
はるか昔に死んだはずの彼が、目の前で話をしている。
立っている。
動いている。
”先輩!!”
あの頃から一つも変わっていない灰原先輩。
衝突する勢いで駆けよると、ぶつかることもなくそのまま体がすり抜ける。
(…ああ、これは)
灰原先輩をにらみつけている偉そうな女。
それは紛れもなく昔の私。
他人が離れていくように、金をかけて髪を脱色し、殻にこもるようにゲームをやり込んでいた頃だ。
つまり、これは単なる私の妄想の世界。
灰原先輩は生き返ってなどいない。
当たり前だ…私は何を期待していたのか。
「この間実習行ったんだってね!どうだった?」
「…普通です」
「そっかー」
起伏のない声。
私はこんなに感じが悪かったのか?
…こりゃ、指摘されるわけだ。
「じゃあ、お疲れ様会しよ!」
「…結構です」
「みんなでご飯でも!」
「結構です」
「えー…じゃあ、また今度さそうね!」
話の途中なのに、勝手にいなくなって。
私はこんなにもムカつく女だったのか。
”ねえ”
男勝りな歩き方の自分に声をかける。
”灰原先輩の誘いに乗りなさいよ“
届かないと分かっているけれど。
”今しか…できないんだよ”
灰原先輩の誘いを断るのも、つんけな態度をとるのも今しかできないけど。
”後で死ぬほど後悔するんだよ”
…まあ、このころの私はまだ何も知らないから仕方ないけど。
”早く灰原先輩に恋しなさいよ”
とにかく。
しばらくすれば、彼女も知ることとなる。
消しても消えてくれない、迷惑な感情を。