第51章 コイワズライ
あの時もそうだった。
七海先輩が を担いで来る時も、全てがスローモーションに見えたのだ。
そして、今も────
呪霊の領域内でも自由に動けた、あの人物────
名前も知らないあのおじさんが、どこから持ってきたのか、園芸用のハサミを構えながら八乙女先輩に近づく。
ああ、ダメだよ。
何が起きているのか分からない自分が、徐々に現状を理解していく。
その刃が八乙女先輩に向いた時、心臓が1度飛び跳ねた。
これから起こるであろう出来事が、頭の中を走って回る。
(また、私のせいで人が…)
”やぁ、おはよう!”
思い出すな。
「…!!!」
声にならない声を、先輩に向かって投じる。
逃げて。
避けて。
今の先輩には―――――
運が―――――!!!
”…きさん”
やめて。
”…さん?”
私のせいで
”鈴木さーん!”
人が死ぬのは見たくないの。
「s」
お願い。
「e」
これ以上、私を嫌いにさせないで。