第51章 コイワズライ
「この子達に危害は」
「加えないよぉ、もちろん!」
そこからは...とにかく凄かった。
様子が見えなくても、音だけでも凄まじい。
「すげぇ...」
虎杖くんは八乙女先輩の言うことをしっかり聞いているようで、感嘆の声を時折漏らした。
「千夏ちゃん〜!強くなったねぇ〜」
「そう?ありがとう」
「これだと永遠に続いちゃいそう♪」
「続くわけないでしょ」
「え〜...あっ!!!」
すると、地響きがしたかと思えば、明るい光が差し込んできた。
そして、首元の締め付けが和らぎ、私達一同、動きを封じられていた人は皆顔を地面に打ち付けた。
「千夏ちゃん!騙したね!」
「騙してないよ」
「時間稼ぎなんて...高度な技を...あの千夏ちゃんがするなんて...!!」
「おい」
強打した鼻と額を労りながら、素早く体を起こす。
呪霊と言い合う先輩であったが、その背中ではなにやら指を動かしている。
これは誰に向けたメッセージなのか。
「っていうか、あんた誰ぇ?」
「──ちゃん、ダメ。この人も私の大切な人」
「...大切な人多すぎ!何でよ!」
ぽん、と肩を叩かれた。
「大丈夫ですか」
その声を聞いて、私は全身から力が抜けてしまった。
安心したのか、それとも────
「どういう状況ですか?」
そうか。
そうなんだ。
私は────だから安心したんだ。
「鈴木さん」
「あ、はい。お久しぶりです、七海先輩」
とりあえず、平静を装う。
目の前で執り行われている抱擁を見ながら、私は事の表面を掻い摘んで伝えた。
けれど、七海先輩に話しかけながらも、私の思考を占めていたのは八乙女先輩だった。
今、八乙女先輩が消えてもおかしくない。
その事を私は理解していた。
理解しているつもりだった。
「何でお前が幸せそうに笑うんだ……!」