第50章 熱源
「…お前ら先輩だろ。後輩の質問にはきちんと答えろ」
「「…」」
担任が逃げた。
この有様に、私達は3人して顔を見合わせる。
「…怖くは、ないよ…多分」
多分、なんだ。
「な、七海も何か言ってよ」
「…ノーコメントで」
「…」
「こんな少しのことでも関わりたくない」
「へぇ、関わりたくないんだ」
突如現れた白髪のチャラ男。
どこから来たんだろう。
この男は文字の通り本当に…一瞬にして現れたのだ。
「やぁやぁ、新入生諸君。お待たせしました〜」
2年の先輩方の間で肩を組むチャラ男。
「3年の五条でーす」
「離れてください」
「嫌でーす」
「拷問ですか」
「まぁまぁ、七海…。ここは我慢だよ」
2人がどんな会話をしていようと、五条先輩は笑顔を絶やさなかった。
その後ろにいる先生の顔はその正反対だったけれど…。
「朝の…」
「ん、あれ見てたの?」
見てたも何も、私達の体に痣ができたのはあの一件のせいだ。
「いやぁ、あれはね、色々あって」
五条先輩の一言に、私達以外の顔が引き攣る。
「何があったんですか?」
そんな中、よくも隣の女は続きを聞こうと思ったな。
「腕試しだよ、腕試し」
「…術師同士で、ですか?」
「そーそ…」「五条、変な事吹き込むな」
こいつらは金の卵なんだ、とまだそんなことを言って…。
「まぁ安心してよ。俺ら、他学年に茶々入れる暇なんてないんだから」
「…んで、他の奴らは?」
「聞きたい?」
「いや、いい」
「えー、そこは聞いとけって」
すると、五条先輩は1歩前に出て片手を広げた。
「俺ら3年は全部で4人。みんな個性豊かで俺の顔が霞んじゃうくらい」
うわぁ…
横の女はイケメンに目をハートにさせているけれど、私はこういうタイプは苦手。
「俺とぉー、ツリ目頑固日本男児とぉー…」
「あの、五条さん」
「ん?」
「それ以上はやめといた方が…」
灰原先輩が控えめに介入したのには、きっと訳があって
私達には分からないけれど、五条先輩は一理あると言って口を閉ざした。