第50章 熱源
「か、貸すわけない…じゃ…」
「貸して」
だから、どうして────
「先輩、が振っても…」
「そんなの分からない。いいから貸して」
どこからそんな考えが浮かび、何故そんなに自信があるのか。
「勝手に探すよ」
「あ…」
感覚が消え始めた私の体は、警備のない城のようなもの。
ポケットの数は少ないし、何よりそのブツを持ってきてしまった。
使う気はなかったのに、持ってきてしまったのだ。
「…や…めて」
先輩の手には20面体のサイコロが10コ。
「どれくらいの奇跡を起こせばいいの?」
先輩は出た目の数次第で、その効力が変わると思っている。
でも、神は私達を常に地獄へ突き落とそうとしていることを忘れてはいけない。
「先輩、お願い…やめて」
「やめたら、ウルハはどうなるの?」
「いい、から」
そのサイコロをいっぺんに振ったらダメだ、ダメなんだ。
「大丈夫。私、悪運強いから」
『大丈夫!悪運には強い方がなんだよね』
やめて。
やめて。
声はもう出ない。
先輩は私の気持ちをひとつも汲み取らず、両手いっぱいのサイコロを宙に投げた。
「…運なんて、私が変えてやっから」
そんな強気な発言をした彼女の瞳は、光の当たり方の問題なのか…
真っ赤に燃えていた。