第49章 この世の理
「んもぉ…どこ行くつもりぃ?逃げるようなら、括りつけておかないと♪」
呪霊は笑い怒った
男の身体を引きずり、自分の手にその手を絡ませる
「な、何でこんなこと…!」
「そんなの自分の胸に聞きなさいよ〜…お・馬・鹿・さん!」
「ぎゃぁぁ!」
その刹那、彼の腕はへんな方向へ曲がり、呪霊のゴスロリ服の帯に差し込まれた
本来ならば助けるべきなのだろうが、私達は誰一人として動かなかった
動けなかったのだ
「くっそ…」
隣にいる虎杖は自分の足を何度も叩き、動けと命じる
私達は全員揃ってアイツに勝負を挑んでも、きっと5秒もすれば全員の息の根が止まっているだろう
そんな想像が容易く出来てしまうほど、戦力差は明らかであった
「ねぇねぇ、千夏ちゃ……えぇ!?なんで泣いてるのぉ!?」
男の悲鳴は完全に無視され、動きたいように動く呪霊
伏黒が間に入るものの、伏黒も恐怖から自由に動けない模様
「なんでなんでぇ?」
「…──ちゃん」
「んん?」
「私っ…もう止める」
彼女が呪霊の手を取って懇願する
「皆を外に出してあげて?」
「皆って…コイツも?」
「うがぁ!」
「…そう。皆は…皆」
「どうして?」
あ、ヤバい。
呪霊の纏う雰囲気がえげつないものに変化した
「この人、何したか分かるでしょ?」
「そ、れは…」
「憎くないの?」
「…」
「殺したいでしょ?」
「…」
「ぐちゃぐちゃにして、苦しんで欲しいでしょ?」
早く逃げないと大変なことになる
私たちには、私だけは、そう確信していた
「虎杖」
「ん?」
「アイツ…連れて逃げよう」
「逃げるって?」
問題はそこなのだ
「逃げるって…逃げるのよ!頭使いなさい」
「ええ?投げやり?」
落ち着け、野薔薇
焦ったら負けなんだから…