第49章 この世の理
「…ふふ。好きにしなよ、千夏ちゃん」
「ったく…何なんだよ!俺がお前に何をしたって…」
「…っ」
次の瞬間。
不思議と男は”ここ”にいて、彼女の強烈な拳を受けていた。
「ハァー……フー…」
「っ…こ、こんなことして、どうなるか…!」
「どうにもならないよ。ね、千夏ちゃん♪」
完全なる傍観者であった私達は、どうすることも出来ず、ぽかんとこの様子を眺めていた。
一番最初に動き始めたのは伏黒で、鈴木さん以外はそれに触発されて同じくして彼女の元へ歩み寄った。
「お、お前ら、た、助けてくれっ!起きたらこんな所にいて……お前らも同じか!?」
殴られた男は左半分の顔を押さえながら、棘先輩にすがりついた。
先輩は戸惑いながらも無言を貫き、隣にいた真希先輩がため息をつけ始末。
「…ま、さか。この女側か…?」
勝手に進んでいく話に翻弄される男は、棘先輩に答えをもらおうと必死。
少し先輩が可哀想だった。
「…釘崎、八乙女さんは伏黒に任せようぜ」
男がすがっている時も、伏黒は彼女のケアを行っていた。
(…やっぱり、好きなんじゃね?)
そんな邪なことを考えながらも、彼女の情緒が気になる。
情緒が乱れると、彼女は何をしでかすか分からない。
…それが怒りや憎しみであれば、あるほど…。
「…明太子」
「め、明太子!?何言ってんだ…くそ、話になんねぇ」
「話になんねーとは、こっちのセリフだ」
真希先輩が男の体を一蹴り。
交流会の怪我がまだ残っていると聞いていたけれど、大丈夫なのか…。
「誰?」
「誰って…お前らこそ誰なんだよ!」
「千夏さんの…弟子っていうのも違ぇけど、まぁそんなところ。んで、あんたは?」
「で、弟子ぃ!?な、何なんだよ…」
男は這いつくばりながら、誰もいない東側へ移動した
「なんて自己中だ…」
きっと、真希先輩の呟きは聞こえなかっただろう