第49章 この世の理
「ねぇ、宿儺様〜。この領域、どお?……ははっ、ごめんなさーい」
呪霊は何を待っているのか。
彼女は何の選択を待ってもらっているのか。
「あの、やおと」
「すとっーぷ!千夏ちゃんに話しかけるの禁止!めっ!」
どんどん時間だけがすぎていく。
立っているのも疲れ、花の中に腰を下ろしたが、特に咎められることも無く。
皆が腰を下ろした頃には、会話のひとつもなくなっていた。
(あー。まじ何やってんだろ)
ここからは出られないし、アイツに話しかけるのも禁止。
この呪霊との戦力差は痛いほど感じてるし、何故かあっちは攻撃してこないし。
「鈴木さん、すげー…」
「…別に」
しばらくすると、虎杖と鈴木さんはシロツメクサで遊び始めたし。
特に参加する気は無い。
背を後ろに倒して上を見上げても、景色は変わらない。
不気味な色が広がってるだけ。
「…ここどこだ」
今度は誰だ、と思って首を伸ばしてみたが、よく考えてみればこの中に中年男性はいない。
「もー。千夏ちゃんがずっと悩んでるせいで起きちゃったよ、あの人」
呪霊が指さした方向には、上半身を起こした中年男性が。
一般人のように見えるが、一般人はここまで来られない。
「っ」
「ふふ。可愛いかぁおしてるぅ」
「…」
「あ、やる?いいよー、私はいつでも準備万端!」
生憎、彼女の背しか見えないこの位置では、何がどうなっているのか全く分からない。
あの男は誰なのか。
”準備万端”というのは、どういうことなのか。
「お、お前…だな!ここはどこなんだ!?」
男は花を労りもせず、荒い足取りで彼女の元へ向かった。
逃げもせず、迎えに行くこともせず、彼女は待ち続けた。