第49章 この世の理
「でもさぁ、私はこの人達嫌いだよ。人間だから」
「いい人もいるんだよ?」
「でも、今まで千夏ちゃんは沢山嫌な思いしてきたじゃん」
「それは…」
「千夏ちゃんはもっともっと、もっと…もっと、幸せになっていいんだよ」
「ちょ」
「千夏ちゃんこそ幸せにならなきゃダメなんだよ!」
どうも、彼女は極端な人間関係しか結べないらしい。
異常に嫌われるか、異常に好かれるか。
「おかしいよ。だってさ、千夏ちゃんは世界一優しいんだよ?なんで優しい人が不幸にならないといけないの?絶対この人達より恵まれた生活を送るべきなの。どうしてこんな現実を受けいれてるの?もっと欲深くなりなよ。私の力も使っていいんだよ。それで、2人だけの世界を作って、ずっとずっと遊ぶの。私は千夏ちゃんのことなら全部肯定する。誰からも悪口なんか言われない。最高でしょ?」
なんて人間らしい呪いなんだ。
姿、格好も人間に寄っているために、呪霊だという先入観がなければ人間だと思ってしまいそう。
「…」
「ああ、可哀想に…。ずっとお姉ちゃんに感情抑えられて…」
「それは違う。千春は私のために…」
「じゃあ、素直になりなよ」
「…そうすると迷惑がかかる」
「迷惑?」
呪霊が私の顔を指さす。
「さっきこの子が言ってた。この状況も人間にとって迷惑なんでしょ?」
「…」
「千夏ちゃんが我慢した結果、迷惑がかかったってことでしょ?」
「そ、それは…」
「それなら、楽しい方を選ぼうよ」
彼女は頭を押え始めた。
そして、私達の顔を順に見ては息を整えて、見ては息を整えて…。
「この子達が千夏ちゃんを押さえ込んでるの?殺しちゃっていい?」
「ダメ!」
「…千夏ちゃん。私、つまらないこと、大っ嫌いなんだよ?」
「まっ、て!」
「気、変わった?」
「…もうちょっとだけ、考えさせて」
「うん、うん!いくらでも待つよぉ!」
私達は蚊帳の外。
この世界は彼女らが作ったものだと言っていたけれど、所詮は呪霊を中心に回っているのか。