第49章 この世の理
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一方で。
「へぇ…私を殺そうってか」
私、釘崎野薔薇はそれはもう沢山の呪霊に囲まれて。
西東京の少年院で陥った状況に酷似…というか、そのまんま。
(あの時は助けが来たから良かったけど…)
この状況から無事に脱出できるなんて思うほど驕ってはいないし、そんな妄想をしている暇もない。
「おい、ふざけんなっ!元の場所に戻せーっ!」
って、喚いても無駄だし。
だからって諦めるわけにもいかない。
「せめて、攻撃は順番にしてよね…」
そんな願いは届く訳もなく、一斉に私に向かって落ちてくる呪霊。
ああ、死んだ。
以前と同じように小さくそう思っていると。
「おいおい…それはないでしょ」
どこからともなく現れたアイツが私の体を包んで、表面に彼女がいるからか、呪霊は一斉に動きを止めた。
「この子は大切なの。傷つけちゃダメ」
呪霊を従わせてるのか…。
こいつらにそんな知性があるとは思えないが、現実はその当たり前を覆している。
「なんでぇ?その子、千夏ちゃんのこと殴ったのに」
フリフリのゴスロリを来た先程の呪霊が現れる。
群れていた呪霊が一気に後ずさり。
ああ、コイツらはこのボスにビビってるだけなのか。
「みんなの所に返して?」
「…むぅ。面白くない!」
「お願い」
「じゃあ、腕の1本くらい…」
「ダメ」
「…つまんないっ!」
小さい子に語りかけるように、ゆったりと。
彼女は珍しく上に立ち、呪霊が言うことを聞いてくれるまで待つ。
「釘崎…!」
瞬きをした瞬間に先程の花が咲き誇る場所に戻り、周りには皆がいた。
「千夏ちゃんは甘すぎるよ」
「甘いほうが美味しいよ?」
「…そういう文脈じゃないよね」
「うん」
「きゃはっ。千夏ちゃん、面白い!」
どうやら、2人は本当に仲がいいみたいで……というか、呪霊側のテンションに彼女が合わせているようだった。
けれど、彼女からは嫌悪感を感じない。