第49章 この世の理
(なんで私達があの女のために命張らないといけないのよ!)
(まぁまぁ…。八乙女さんを助けるためだと思って…)
「そこ、無駄話すんなっ!」
緩急の激しいこの戦い。
禪院先輩と虎杖を先頭に、俺達は先へ進む。
”動くな”
呪霊も強くなり、狗巻先輩も動きを止めることしか出来なくなってきた。
「…ッチ」
鈴木さんも何やら調子が悪くなってきたようだし。
不穏な空気が漂い始めた。
”ゥォォオー”
先を走る玉犬が八乙女さんの匂いを感じとったようだ。
そこは壁で行き止まりになっていたが、俺達はこの造りを知っている。
虎杖が壁を壊して、先へ足を踏み入れると…。
そこは端から端までシロツメクサが咲き誇っていた。
空は紫やら青やら黒やらが複雑に混ざり合い、芸術性のある空ができていた。
「くすぐったいよ…はは」
遥か向こうで玉犬が八乙女さんに絡んでいる。
あそこまでどれくらいかかるかと見積もっていたところで…。
「あれ、みんな…」
体が勝手に動き、一瞬でそこまで行くことが出来た。
引き寄せられた、という方が適切か。
「千夏さん…」
「なんでここに?」
「っ…」
呪いと共同して領域を展開するなんて、八乙女さんらしいにも程があるけれど、そんなことを八乙女さんがする理由がない。
だから、勝手に全員が「八乙女さんが以前のように戦闘不能になり呪いに利用されている」というシナリオを描いていたのだが…。
「呪い…!」
八乙女さんの隣でニタニタと笑う丸い呪霊。
すぐさま全員が戦闘態勢をとるが…。
「待って!この子は大丈夫だから」
八乙女さんがそう言って、呪霊に抱きついたではないか。
呪霊も八乙女さんを傷つける様子はない。
「────ちゃんって言うの。私のお友達」
「…────、ちゃん」
誰もが呆気に取られる中、釘崎が1歩前に出て首を横に傾けた。