第49章 この世の理
「うっわ、何ここ…」
「…キモすぎ」
今度は呪霊ばかり。
低級呪霊ではあるものの、量が尋常ではない。
やはり、宣言通り鈴木さんは1回も戦わず、全て釘崎や俺が祓うことに。
特に問題は無いのだけれど、釘崎は”戦ってもらって当然”という顔が気に食わないらしく、終始イライラしていた。
「これ、キリがないね」
「ええ。でも、前に進むには…」
「私がやるよ」
「え?」
鈴木さんはポケットからサイコロを取り出して、無造作に前に投げ出した。
カッ…コロッ…
「ん…いいんじゃない?」
彼女が呪霊を恐れずサイコロを拾いに向かう。
「…天巡命命(てんじゅんめいめい)」
彼女がサイコロを手にそう呟くと、周りの汚れた空気が一気に晴れた。
「…さぁ、次。早く終わらせよ」
俺達がいくら動き回っても、呪霊は留まることを知らなかったのに。
この人はそれを1発で…。
「鈴木さんって、術師辞めてるんですよね」
「…今のは運が良かっただけだよ。何事も、全て運が決めるんだから…」
この人は……かなり強い。
ここにいる誰もがそう思った。
しかし、彼女がサイコロを振るのは気まぐれで、かなり押された状況でないと前に出てこない。
それでも、俺達が疲労をあまり感じずにいられるのは、彼女の策のおかげ。
彼女は余程のゲーマーらしく、この状況をダンジョン攻略だと思って頭を働かせ、最小限の動きでその場を制す。
苛立っていた釘崎も、徐々に彼女を信頼し始めた。
「…休憩とる?いらないよね」
でも、戦わないスタンスは変える様子はなく、息が上がってきた俺たちを見ても尚、スピード重視で進もうとする。
八乙女さんの領域だからか、共同している呪いのレベルが高いのか。
奥に進めば進むほど時間感覚がなくなり、呪霊は強くなる。