第49章 この世の理
狗巻先輩が扉を開けると、その先は全く違う世界で。
領域内とは思えないほど綺麗であった。
青空には羊雲が浮かび、青緑色の草原がはるか向こうまで広がっている。
「ん…これ、壁だ…」
しかし、それは広がっているように見えただけで、実際はそんな単純な作りではなかった。
「階段が入り組んでんな…。壊して進むか?」
「いや、呪力が含まれてる。壊せない」
上から下へ、手前から奥へ…。
階段や廊下が蛇のように絡まっていて、全くゴールが見えない。
そもそもゴールなんてないのかもしれない。
「とりあえず進も…」
「馬鹿なの?」
声の主は気だるい鈴木さん。
再び眼鏡をかけた彼女は、目を鋭くして饒舌に話し始める。
「こんなの手当り次第行くなんて…。ありえない、労力の無駄。大体こういうのはパターン化されてて……つまりは、ゲームと同じ」
領域内がゲームと同じだと?
信じられない言葉に唖然する中、鈴木さんは1人周りを見渡して考え始めた。
「…はぁ、つまらないなぁ」
しばらくすると、鈴木さんは頭を搔きながらため息をついた。
「…行くよ。ここにも呪霊なんかいないから安心して」
「え…」
鈴木さんは1人歩き始め、今にも姿が消えそうだった。
この中で1人になるのは誰でも避けたいものだから、俺達は必死に後を追った。
「…はい、次の扉」
5分程歩いて、1度も迷うことなく次の扉を発見した鈴木さん。
「もう着いた…!鈴木さんの術式、凄いっすね!」
「…術式?そんなの使ってない」
「え…。まじっすか!?」
虎杖はいつもと同じように鈴木さんと接しているが、その他4人は正直疑っていた。
けれど、疑っても意味が無いことは全員分かっている。
「…次。早く」