第48章 緊急事態
「進むしか、ないのか…」
真希先輩に呪具を貸し、とりあえず前進することを決めたその時。
「これは…中々筋がいい」
「おまっ…出てくんなって」
虎杖の顔が割れ、そこから口が出現した。
「この領域は誰のものだ」
「知れねーけど、多分八乙女さんだって」
宿儺…!
全員が応戦体制をとる。
「…なるほど。落ちぶれたか」
「はあ?何言って…」
「感謝しろ。俺は今非常に機嫌がいい。一つアドバイスをくれてやろう」
口がにやりと浮かび、俺は唾をのんだ。
「これは呪いと領域展開が混ざっている。はるか昔にはこれを”領域狷介”と揶揄していた」
「りょういき、けんかい?」
「まさか、今の世にそれができる人間がいるとは思わなかったが…これはまだ不完全な領域狷介…壊すのなら今のうちだろう」
ぞくり。
何故だか、宿儺と目が合ったような気がした。
「だが、混じった呪いを払ったとき、その八乙女とかいう人間の領域の本性が現れる。その領域に勝るものを作り出せるものは”まだ”この場にいない」
「…え?俺たち死ぬの?」
「死を拒むと言うのなら、俺に体を貸すか?」
気味悪く笑う口に、釘崎が舌打ちをする。
「せいぜい、足掻け苦しめ。そして…私を楽しませろ」
「全然アドバイスじゃないじゃん!」
ガシャガシャ…と。
領域内が入れ替わる。
それと同時に全ての体が消えた。
しかし、時間とともに再び1人、2人と…増えていく。
「この人達、生きてるのか………あ、消えた」
今のところ誰も被害にあっていない。
そして、嫌な感じもない。
「…助けを呼んだ方がいいんじゃね?」
「宿儺の言うことを信じるなら…それが最善だろうな」
「逆に。別に先輩達を舐めてる訳じゃないけど、アイツにこのメンツで勝てる気がしない」
「…しゃけ」
という理由で、とりあえず外と連絡を取ることを決めた。