第48章 緊急事態
「…これら私の持論だよ?」
私は名のある家系に生まれたわけでも、双子でもない。
術式は使えるし、呪いが見える。
「真希が大きな選択をする度に…真希は真衣のことを思ってたと思う。それでも真希はこの道を選んだ。だから、真衣にも過酷な選択をさせてしまったわけだけど…」
うまい言葉が見つからない。
「…それは順序が違かっただけ。きっとこの先…いつかは分からないけど、真衣の選択に真希が揺すぶられることになると思う」
「真衣の…選択…」
「ずっと、その繰り返し。繰り返しだよ」
大事なのは、その選択をした時にどれだけ相手を想ったか。
相手のことを考えても尚、その選択をしたんだ!…と、思うしかない。
そう思わないと、私は…千秋と千冬に顔向けできない。
「…皆、千夏さんのこと馬鹿にするけど、何ででしょうね」
「私が馬鹿だからじゃない?」
(…認めてるのか)
真希は変なものを見るような視線を外して、肩まで湯に浸かって天井を見上げた。
「私はそうは思いませんよ」
「…そんなの初めて言われた」
「尊敬してます」
「…それも初めて言われた」
尊敬…。
私が皆に向けていた眼差しを、私も受けることとなるとは…。
「野郎共!!今日は私の奢りだーーーー!!!!」
「「「いぇーー!」」」「…」「明太子!」「…はぁ」
気前よく、1つのクレジットカードを恵に渡す。
恵を選んだのは、1番金の価値を知ってそうだから。
「千夏はどこ行くんだァ?」
「私はぶらぶら観光。皆適当に楽しんでー。21時までにホテルに戻ってくれればいい」
また恵を除け者にする気か、と思ったけれど、1年ズは3人仲良く既に歩き出している。
良かった、と踵を返して数歩歩いて、立ち止まる。
「なんであんたは行かないの」
「着ぐるみって偽るのも疲れた。今日はホテルで休む」
「っそ。スーパーで何か買ってこようか?」
「昨日買ったから平気」
飛行機ではぬいぐるみとして、ここでは着ぐるみとして…。
パンダもパンダで外出が困難なこと。