第48章 緊急事態
「…恵」
「はい」
「いい男に育ったね…」
「はい?」
「悟に似てk」
「やめてください」
忘れられるのと、死ぬのは全く違うけれど、辛いのは忘れられてしまうこと。
けれど、正直、今…恵の言葉を聞いて、私のことを忘れてくれても構わないと思ってしまった。
さっきまで”覚えてくれてたら嬉しい”なんて言っていたくせに。
1人でも恵のように思ってくれている人がいるなら、もう何でもいいと思ってしまう。
やっぱり、私の大好きな人達が、幸せに生きていてくれればそれでいい。
寿命が来るまで生きてくれればいい。
「帰ろっか」
「はい。コンビニ寄ります?」
「ううん。早くお風呂入りたい」
ここがどこだか分からなかったから、地図アプリを使ってホテルまで走り。
勝手にいなくなった皆と合流して。
「皆…恵を除け者にして!!!」
「八乙女さん、いいですから…」
皆、ヘラヘラして…。
というか、私の相手をしてないというか…。
「明日は10時に外集合ね!」
皆が各々楽しんでくれたらいいのだけれど、出来れば明日は恵も混ぜて欲しい。
そう思いながら、皆より少し格の高い個室に入った。
「んで?キスした?」
部屋に常備されていた500mlの水。
少しだけ床に零れた。
「するわけないでしょ」
「なんだ。せっかく時間あげたのに」
「高菜!」
キス…だとか。
どうして俺が八乙女さんに好意をよせいている設定なのだろうか。
「風呂空いたぜー……って、どうしたんすか?」
「伏黒がキスしてないって」
「…お前、奥手だなぁ」
だ・か・ら!!!
「別に好きじゃねーって言ってんだろ」
「あ、そなの?」
「…もういい」
こんなことなら、俺も部屋を個室にしてもらえばよかった。
…ったく、うぜぇ……