第47章 修学旅行
抱きついたら、離れていくと思った。
泣いたら、泣くなと言われるかと思った。
でも、恵は私を抱き寄せてくれた。
泣いていいですよ、と言ってくれた。
悟は”呪術師をやめてほしい”と、ずっと、ずっと、密かに願っていた。
今でもそう思っているかもしれない。
でも、私は死ぬまで呪術師として生きると決めた。
自分は呪術師なのに、私に呪術師になって欲しくないという言い分が、とても気に入らなかった。
「…死にたくない」
「それは普通の感情です」
「でも、それ以上に皆に死んで欲しくない…やだっ…」
鮮血を撒き散らせ、自分が死ぬ事に気づかないまま息絶える。
そんな現場を何度も、何度も、目の前で見てきた。
「恵っ…死んじゃ嫌」
「死にません」
「でもっ…あの人たちは、死んじゃったの…」
「それは……八乙女さんのせいじゃないです」
「っ…うっ…あぁあぁ…」
大抵は被害が出てから動くことしか出来ない私達。
守れた人がいれば、当然守れなかった人もいる。
全ての人を助けるのは、並大抵のことはなく奇跡である。
その奇跡を信じ続けてきた心にモヤがかかり始めたのは、ここ数ヶ月のこと。
「1度息抜きしたらどうですか」
「息抜きばっか、してるよ」
「それは療養中だからでしょ。そうじゃなくて、もっと大掛かりに環境を変えて過ごしてみるのは?」
「…1人だと何していいか分からない」
「…五条先生を誘うのも無理ですもんね」
今頃、私たちの破局が伝わっているのだろうか。
たった1組のカップルに左右される世界など狂っているけれど、事実…私達は呪術界を狂わせる力を持っていた。