第47章 修学旅行
「…俺と行きますか」
「え?」
「…嫌ですかね」
恵はまた泣きそうになっていた。
全く涙の気配は無いかもしれないけれど、悲しむ子犬のような…。
「恵は…学校あるでしょ?」
「サボります。あの先生、ほとんどいないし」
「…ふふ。本気にしちゃうよ?」
「いいですよ」
驚いた。
恵がこんなに私を気遣ってくれるなんて。
いや、気遣ってくれてるのはいつもの事なのだけれど…。
「そしたらさ、野薔薇達も誘おうよ」
「…え?」
「え?恵、そっちの方が楽しいんじゃない?」
私も脱走して皆で沖縄に行ったこともあったし、それはとてもいい思い出となっている。
そういう数少ない楽しい思い出を増やして欲しいし、私達が脱走できたように皆も脱走できると思うのだけれど…。
「…まぁ、はい。いいですけど…」
「…?ふたりで行きたかった?」
「ど…!して、そう簡単に…」
「ん?」
恵は少し慌てて、大きなため息。
「はぁ……もう明日から行きましょ」
「へぁ!?明日!?」
「釘崎にはそっちから言ってください。虎杖には言っておくんで」
「え、恵?貴方、そんなに行動力あったんですか?」
明日はさすがに早すぎやしませんか。
そう異議を唱えると、
・明日から五条先生は出張
→座学は休校
・実習があるけどそれはサボる
→八乙女さんに「ダメ」とは言わせない
・任務は2年sに任せる
→貸しということにすれば2年sは食いつくはず
「わ、分かった…」
「じゃあ釘崎に連絡」
「ら、らじゃ」
2人で駆けるように病院を出て携帯をいじくりまわす。
いつの間にか上下関係が変動していると気が付いたのは、野薔薇から了承のメッセージが届いてからだった。