第47章 修学旅行
「使う、ってなんですか」
「詳しくは言えないんだよ。ごめんね」
それで…。
私が話したいのはここからだ。
「死んで勝つのと、死んでも勝つ。恵は前者だろうね」
「…」
「だって君には奥の手があるから」
「…五条先生に聞いたんですか」
「いや。聞いたも何も、知ってるんだよ」
そう、知っている。
だって…。
「八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)」
「…!」
「私に許されたのは、コイツを調伏させることだけ」
「な、んで…」
「これで分かって貰えた?千春は…危険なんだ。私を殺したい奴は少なくない」
八握剣異戒神将魔虚羅なんて言葉、数十年誰も手につけていない古い歴史書くらいにしか出てこないだろう。
調伏だとか、式神だとか…。
そんなことを知り得るのは、禪院家や御三家程度の超エリートの中のかぎられた人のみ。
恵が驚くのは当然だ。
「この術式をくれたってことは、死ねって言われてるのと同然。私にもそれなりの覚悟があった時期があってね」
ふと、恵の顔を見ると…。
「…信じてない?」
「そりゃ…五条先生に聞いたとしか…」
…まぁ仕方ないか。
「じゃあ、試してみようか」
「え?」
左腕を少し伸ばして、その内側に反対の拳を当てる。
その仕草に恵の目はみるみる大きくなり…。
「布瑠部由…」
「何やってんですか!」
すぐさま組手を崩されて。
「津美紀がいるのに…!っていうか、そんな簡単に…!」
「大丈夫だよ。私、今は調伏の議なんて出来ないから」
「…はぁ?」
「焦らせてごめん」
私にはもう、何も出来ない。
何も。
「ちょ…」
千春がいなくなって、悟もいなくなって。
そんな未来が来てもいいように、今まで何度も考えてきた。
耐えられると思った。