第47章 修学旅行
私の不幸は、私が幸せになることを拒むこと。
そして、周りの人の幸せまで奪ってしまうこと。
ずっと、ずっと……今だってそうだ。
「…別に俺じゃなくたっていいんです。その顔をして欲しくないだけだから」
「…本当になんでかねぇ」
グズグズの声で首元を擦る。
「どうして…幸せが、壊れちゃうんだろ」
ぽたぽたと溢れる涙は、津美紀さんのシーツを濡らした。
「何かしたかなぁ…」
津美紀さんの手を握りながら懇願する。
どうか恵に不幸が行きませんように、と。
私の我慢が不十分だったせいで、恵が離れていきませんように、と。
「そんなに…生きてたらダメなのかなぁ…」
早く死ねと言わんばかりの運命。
悟もいない、千春もいない…。
理由は謎のまま、術式が思うように使えず…。
孤立した私は呪術師として働けない。
「…俺は八乙女さんに生きてて欲しいですよ」
恵はそう言って、椅子から降りて私の背中を撫でてくれた。
「…昔から何も怖くなかった。どんなに危険なことをしても、大きな怪我をしたことは無いし、絶対にしないって分かってたから」
「…千春さんですか」
「…知ってたんだ」
「前に五条先生が」
「…本当に適当なんだから」
千春がいるから、私は死なない。
千春が死ねば、私の人生は終わる。
小さい時は本当にそう思っていた。
「でも、自分の術式すら上手く扱えない今、千春がいない今……死んじゃうって思うタイミングが多すぎる」
あの時パッチワーク呪霊が本気で襲いかかってきたら。
あの時他の敵がいたとしたら。
かなりの確率で死んでいたと思う。
「死ぬのは…怖いよ」
「…八乙女さんも、そう思うんですね」
「だって、人は死んだら…普通は二度と会えないから」
会えなくなるというのは、これ以上思い出を増やせないということ。
もっと、もっと、みんなと過ごしたいから、私は死にたくない。