第47章 修学旅行
「あ、最後に。今日、恵とご飯食べるんでしょ?」
「何で知ってんの」
「その格好で行かないでね」
どの格好だ、と自分の姿を確認してみれば、パステルカラーの袖なしロングワンピースに、レース生地の羽織物。
元々、夜は少し冷えるから上着をしっかりしたものにしようと思っていたけれど…。
「…友達として?」
「そっ。親友として」
「私”も”親友の枠に入れてくれるんだ」
昔から悟の隣にいてしっくりとくるのは、彼の姿だけ。
何もかもが絶妙にマッチした2人は、運命共同体と言う言葉が似合うような、最高に最強なコンビであった。
そんな彼と同じ肩書きでいられるなんて光栄だけれど、少し悲しい気持ちになる。
また、再び。
そのコンビで笑う姿を見れるのは、いつになるのだろうか。
「…今日の夜、上に僕らの破局が正式に伝わる」
「あらら、そんな大事になって。私達って有名人みたい」
「有名人なんだよ。僕はともかく、千夏もね。まぁ、上に正式に報告されるまでの大事になるのは、主に…僕が原因だけど」
「えー。私が特級だったの、10年以上前だよ?」
特級という階級を与えられていたのははるか昔のこと。
今は1級術師として働いている。
肩書きとして上なのはどちらか言うまでもないが、私は今の肩書きの方が正直嬉しい。
「…そりゃあ。最近は昔と違って、全くないからね」
「何が?」
「千夏の強さを目に見る機会が」
「?」
私の強さ?
「呪言を扱ってた方が強かったってこと?」
「違う。千夏は思ってるよりもっと強いよってこと」
「千春がいるから?」
「違うよ。本当に鈍感だね、君は」
「いてっ」
でこぴんをされても、全く閃かない。
だって、今も昔と同じように任務に行っているではないか。
機会なんて溢れに溢れているはずなのに。
「ま、そういうことだから〜」
「あ。待っ」
帰ろうとする悟を呼び止めて、贅沢なお願いをする予定だった。
「…これでしょ?」
「…ん」
けれど、悟はそれを読んで、頼むより先に口を重ねてきた。
「これが本当にラストだからね」
「分かってる」
大きい手で私の頭を撫で、彼は去っていく。
彼の笑顔は脳裏に焼き付いて消えてくれなかった。