第47章 修学旅行
「…なんか、別れた方が一緒に居れる時間増えるって、おかしな話だよね」
「それは千夏が怪我して任務に行ってないからだよ」
「本当に?」
「…多分ね」
きっと、私達が付き合っていた事を知らない人はいないだろうけど、私達が別れたことはあまり広まっていない気がする。
「あ。昨日お菓子買いすぎたから、後で悟にもあげる」
「うん。ありがと。僕も葡萄貰ったんだけど、量多くて食べれないから後で渡す」
「お。ラッキー」
お菓子と葡萄の交換。
これくらい、友達同士でもやるよね。
(…何いちいち考えてんの、ばか)
「早く戻んなよ。野薔薇、絶対キレてる」
「キレる?喜ぶの間違いじゃなくて?」
…。
あの子、勉強できるんだっけ。
真面目に学校通ってたタイプだっけ。
「…仕事、して下さい」
「うっわー、いい大人ぶってるー」
「ぶってねーし」
わ、私だって勉強は好きだった。
でも、ずっと椅子に座っているのが苦手だっただけ。
「…ぶってねーし、か」
「ん?」
「何でもなーい」
枯れた向日葵の花弁をちぎって、悟はそれを私の頭にまぶした。
必死に払うけど、悟の様子から見て、鏡を見ないと全部は取れなそうだ。
「千春、戻ってくるといいね」
「うん。早く戻ってこないと、げんこつの数が増えちゃうのに」
もう少しでここは向日葵ではなく、違う花が植えられる。
そしたら、またここで今のように話せるといいな、と1人心の中で願った。