第47章 修学旅行
「八乙女さぁん、何を笑っていらっしゃるの?」
「ははっ、だって、この動画…」
「そこまでおもろくねーよ。本当にツボおかしいよな」
朝起きてすぐ、大笑いする私たち。
いや、大笑いしているのは私だけか。
「腹筋、痛い…」
「体、大丈夫?」
「なんかね、3日経ったら筋肉痛くらいになってくれて」
「…回復力鬼すぎん?」
「ははっ、それよく言われる〜」
愚痴という愚痴を野薔薇に吐いて、気分よく目覚めた朝。
野薔薇も愚痴を言ったのだからお互い様だと言ってくれるけど、私は彼女にとても感謝している。
特に、野薔薇達と出会った時は本当に孤独で、毎秒毎秒暗闇が押し寄せてきて。
野薔薇達の存在がどれだけ大きかったか。
「忘れ物は?」
「ない。なんか、お母さんみたいだね」
「やめろ」
野薔薇は授業があるらしく、寮を出てすぐに別れた。
(授業って、懐かしい響き♪)
高専内は広いけれど、私が通る可能性があるのはごく一部。
そして、ここは高専時代から利用していた道である。
私が通っていた頃からこの場所には向日葵が咲いていて、今はほとんど枯れた向日葵が咲いている。
確か、手入れは用務員さんがしているのだけれど、相変わらず適当で。
懐かしさから笑顔がこぼれる。
私もあの校舎で様々な授業を受けてきたけれど…。
今の学長が教壇に立っていたのだから、彼女達の教壇に立つのは…。
「あれ、千夏?」
ん?
振り返ると、そこにはたった今思い浮かべていた男の人。
「こんな所で何してんの?」
彼は私の横で同じようにカラカラの向日葵を愛でた。
「あれ?」
「ん?」
「授業は?」
「ああ。今の時間は自習にした」
どうやら、適当に問題をピックアップして、自分は休憩中だという。
(いや、自習て…)
「今、サボりだと思ったでしょ」
「うん」
「嫌だなぁ。ちょっと休憩してるだけ」
「それってサボりじゃないの?」
「違うよ」
あまりに真面目に否定してくるもんだから。
思わず吹き出してしまって。
息で向日葵のカスが飛んでいく。