• テキストサイズ

【呪術廻戦】infinity

第6章 変わらない優しさ


「千夏…。やっぱり入るよ」


カーテンを閉め切った部屋に、一筋の光が伸びた。
硝子は私を見るなり、目を見開き硬直した。


「ど、どうしたの?」
「えっ?あ、あぁ、大丈夫。大丈夫」


汗だくの顔を隠すように下を向いた。


「なんか叫んでたけど、五条に何か言われた?」
「言われてない、ってか、電話でてないし…」
「マジ?」
「そういえば、携帯どこやったっけ、あはは…」


携帯を探そうと思って動いたら、足に力が入らなくなって。
その場に座り込んでしまった。


「…ほんと、何があったの?」


硝子は私の背中を優しく撫でてくれた。
こんなこと、私の周りにしてくれる人はいなかった。
親ですら、してくれなかった。


私は今、とても恵まれている。


「千夏って秘密主義だし、言いたくないことは無理して言わなくていいって、私も思ってる」


けどさ。


「少しくらい私達を頼ってよ。寂しいじゃん」


あんたが強いのは知ってる。
特別なことも知ってる。
今まで、先生と揉めてることも、五条との間に秘密があることも、制服が白いことも、聞きたくてもスルーしてきた。


「ごめっ……」
「いいよ。何も言わなくて。待つから」
「……ほんと、ごめん」


こんな人がこの世にいるなんて。
数年前の私は知らなかった。



ずっとひとりで。
過去の記憶を糧に生きてきた。


「しょ、こ…。本当にありがとう」
「千夏がそんなこと言うなんて、明日は槍でも降るのかー?」
「もう少し、こうしてて、いい?」
「…どーぞ」


多分、人間は一人で生きていけないから、人の温もりを感じて安心するんだ。
周りに人がいることを、1番手っ取り早く知る方法だから。
薄れゆく意識の中で、温もりを噛み締めると共に、絶対に失わないよう努力することを決めた。

/ 1115ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp