第6章 変わらない優しさ
しばらくすると。
どのくらいしばらくかと言うと、硝子が去ってから1分くらい。
五条から電話がかかってきた。
「今は、ないっしょ…」
昨日からずっと話したかったけれど。
話したいと願っていたけれど。
今に限って話せるチャンスをくれるなんて。
神様、酷すぎるよ。
携帯をベットのマットレスの底に埋め込み、クッションで頭を挟んだ。
しばらくすると。
どのくらいしばらくかと言うと、30秒くらい。
コール音が止まった。
『ほんっとクソ弱いメンタルしてんな』
「…ごめん」
『利用できるもんは利用すんだよ』
「ごめん」
『私達のこと使えばいいのに。そしたら、千夏は本当に”特別”になれるよ』
「…なりたくないもん」
『そしたら、世界は千夏のもん。何でもかんでも好きなように……』
「五条と約束したもん」
『…ッチ』
「…ごめん」
『謝んなよ。千夏は好きなように生きればいいんだ。私達がいらな……』
「そんな事言わないでよ!!」
息が荒れる。