第46章 舞文曲筆
「…お酒、飲みました?」
フルフルと首を振る。
それでは、熱でもあるのかと思って額に手を伸ばさせてもらうと、確かに体温は高そうに思えた。
「熱、測りましょうか」
「んーん。そういうんじゃない」
私の股間の上で彼女が腰を小刻みに動かす。
「……………まさか」
いや、そんなはずは無い。
そんなことがあっては…。
「ねーぇー。七海ちゃんの、おっきくなんない」
ムスッと膨れる彼女の顔。
涙目、荒い息、火照る頬。
「離れてください」
「や」
「いいから…」
彼女の体を少し浮かせて、横に押し倒すようにして体をどかす。
「んはぁ……うわぁお。積極的ぃー」
「バカ言わないでください」
彼女が薬を飲んでいたとしたら…この状況はマズイ。
その上、先程無理に口に注がれたものも同じ類のものであるとしたら、もっとマズイ。
組み敷いた彼女の手を離してその場を去ろうとしたが、腕を力強く掴まれる。
彼女の力は本当に強いので、逃れることは出来ない。
「どこ行くの。慰めて」
「私は関わりません」
「お願い…。体、熱いし、苦しいし…」
このような状況を前にして、衝動的になりそうで困る。
彼女は今混乱しているだけ。
薬に頼ったのも、無理にでも昇華しないといけない気持ちがあったから。
「先輩を助けると思ってさぁ…」
いい加減、言葉を紡ぐ姿にも苦しさが見える。
このままでは勝手に始めてしまいそう。
「…七海、ちゃん」
「………そんな顔しても無駄です」
「はぁ…ひっ、ど…」
「するならお独りで」
彼女の馬鹿力に対抗して、何とかリビングから出た。
といっても、この家の間取り的に逃げ込める部屋もないために、廊下の壁にもたれかかるしかない。
(…災難すぎる)
しばらくすると、本当に独りで慰め始めた証拠である喘ぎ声が控えめに聞こえてきた。
耳栓代わりになるものは、全て向こうの部屋にある。
自身の股の膨らみは、彼女の色気に対するものか薬のせいかは分からないが、どちらにせよ慰めるのには抵抗があった。
しかし、彼女の喘ぎ声は私自身を色々駆り立ててくる。
自身に手を伸ばすのには、それほど時間はかからなかった。