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【呪術廻戦】infinity

第6章 変わらない優しさ


「…ほんと、先生の頼み事はくだらねーよ」



ポケットからボールペンを取り出し、紙に文字を書く。

そして、紙を4つ折りにして先生に突き返した。



「これ、開けないでね。すぐに捨てろよ」



『この紙を捨てて、今日の八乙女との会話を忘れろ』

毎回、毎回、こうやって先生の記憶を消し続けている。

だから、さっき先生は少し悲しい顔をしたんだ。



先生にこんなことしたくない。

だから、すぐに捨てて欲しい。

そして、以後私にこんなくだらないことをさせないで欲しい。

ペンを取りだした時点で止めて欲しい。

そんな優しさは先生に似合わない。



「…何だ、この紙」

「せん、せい」



先生は私の頭を撫でて、笑った。

笑って、呪いの手紙を読んだ。



「……ん、あぁ。千夏か」



手紙は既にゴミ箱の中にある。

先生が先程丸めて投げていた。



「ごめ、んなさい」

「…千夏?」

「私…。あは、本当に、何で、私、が、生きてんだろ」

「おい…!」



泣き虫千夏ちゃん。

小さい頃のあだ名だった。

嬉しいこと、悲しいこと。

全てのことに涙を流していた。



そして、今も。



廊下を走りながら、目に涙を溜めていた。

泣くな、泣くな、と念じても湧いてくる。



「あ、千夏〜。さっきの……」



ごめんなさい、硝子。

今は誰とも話したくない。


硝子を無視して部屋に駆け込む。

そして、クッションを手に取って顔を押し付けた。



「うっ、うっ……」



どうしても理解できない。

必要とされている人が次々に消えていって、いなくてもいいような人がのうのうと生きている。

人に迷惑をかけて、人の立場を利用して生きている。




私は五条に生かされている。




「千夏、大丈夫?」



部屋の外から硝子が心配の言葉をかけてくれた。

ガラガラ声で大丈夫と応えると、『そう』と言う言葉をくれた。

その淡泊さが、とてもありがたかった。

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