第45章 酒の力
「今日家行くよって言ったのに」
「聞いたよ。帰って」
悟を無視して中に入る。
ソファの上に荷物を全部置いて、下着と洗顔料を持って脱衣所へ向かう。
RPGゲームのように後ろを付いてくる彼だったが、脱衣所のドアの鍵を閉めると、間に物理的障害ができる。
「…ひっどいなぁ」
彼が遠ざかったことを確認してから、パジャマを洗濯機の蓋の上に投げつけた。
(…最低)
彼のデレカシーのなさは最低クラス。
私の態度も最低クラス。
その両方にイラつきながら、ゆっくりと服を脱ぐ。
(…謝ろ)
とりあえず、私の態度の悪さに対してのみ謝ることを決意して、風呂場に入る。
湯船を貯めながらシャワーを浴びたので、風呂場には1時間近く居座った。
風呂から出ても悟はまだ帰っていなかった。
それだけでなく、彼の横には酒瓶とグラスが無造作に置かれていて、彼の頭は机に乗せられていた。
「な、何やってんの…」
しかも、その酒は硝子がくれたもので、度数は40%とかなり高い。
酒嫌い…というか、お酒に耐性が全くない悟が飲むものでは無い。
「ねぇ、大丈夫?」
急いで水を持ってきて、悟の様子を確かめる。
頬を2回叩けば、だるそうに瞼が開かれて、頭が持ち上がる。
お酒独特の匂いとキツい酸の匂いがした。
「水」
「……がと」
彼は一気に水を飲み込むと、ぷはぁと息を吐き出して。
それとほぼ同時に口を押えた。
「吐く?」
「も、吐いた……何回か」
背中を擦りながら考える。
今まで頑なにお酒を飲まなかったのに、いきなりこんな強いものを飲むなんて。
頭おかしくなった?