第45章 酒の力
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「…仮にも女性である貴方を」
「仮ってなによ、仮って」
「…とにかく、送ると言っているんです」
「まだ早いから大丈夫だよ」
七海ちゃんの家でしたことと言えば、寝て、食べて、話して…。
大事な話でもあるのかと思ったけれど、特にそういった話も無く…。
「ここから千夏さんの家ってかなり歩きますよ」
「いーの、いーの。また沢山お話しようね」
「体」
「うっ…」
「今車回します。外で待っててください」
スーツを着ていない七海ちゃんは何を着るのだろうか、と疑問に思う人も多いと思う。
そのアンサーが今目の前に。
特にファッションに興味のない彼が着るものといえば、貰い物と無地のシャツ、スエット…等等。
きっとプレゼントしたものは大事にしてくれそうだから、今度は派手派手のパーカーなんてものをプレゼントしてみようかな。
「送ってくれてありがとう。またいつか」
家の前まで送ってくれた優男に向かってスマイル。
手を振りそうになったけれど、痛めていることを思い出して自粛した。
「…何かあったら連絡ください」
「んー。アデュ~♪」
七海ちゃんは本当に聞き上手で、ほとんど私が話してしまった。
まぁ、ほとんどが悟関連の話だから彼もうんざりしているだろうけど、決して私の話を邪魔しない。
そして、言葉を探していると欲しい言葉を提示してくれる。
七海ちゃんの悩みも聞きたいけれど、私なんかに相談するなら別の人に相談した方がいいと言われてしまいそう。
七海ちゃんが私の心にかかったベールをめくってくれたことスッキリとしている。
痛い腕を使ってカバンから鍵を出し、鍵穴に差し込んだ。
ガチャと言う音を聞いて、ドアを開ける。
「おかえり」
廊下の壁に寄りかかる男。
中に人がいるはずないことを知っていたから、思わず後ずさり。
しかし、彼の顔を認識すると、泥棒以外に中に入れる人物がいることを思い出した。