第45章 酒の力
そんな新事実を知った私は、とある疑問を抱えたままその場を後にし、すり足さし足でなるべく振動を与えないように、七海ちゃんの元へ向かった。
朝にここで少し話していたから、まだここら辺にいるだろうと思いさまよっていたが、今は便利な携帯電話があることに気がつき、七海ちゃんを呼び出した。
私達は朝と同じ場所で合流し、椅子に腰かけて話すことにした。
「そうですか。虎杖君が…」
「聞いちゃダメだったかな」
「知りません」
全く。
いつでもどこでも七海ちゃんは七海ちゃんだ。
「その、さ?悟、大丈夫だったかな」
「?」
「そんな秘密抱えて、辛かったと思うから…」
私も同じ秘密を抱えているから分かる。
秘密を隠すことだけでなく、その内容は世界を脅かす可能性があるのだから。
「…男の人って皆そんな感じ?周りの人に完璧な姿を見せたがるじゃん」
七海ちゃんが何も言ってくれないから、私は思っていることを言い続ける。
「こちらとしては、事によっては一緒に抱えたいと思うんだけど」
「…」
「その。七海ちゃんだったら、悟と同じ様に自分で結論出すまで誰にも相談しない?」
七海ちゃんは目の前のカップにミルクを入れて、飲むわけでもなく、かき混ぜるわけでもなく、そのまま放置。
「…私なら」
「…七海ちゃんなら?」
見つめあったまま静止。
中々続く言葉がやってこない。
「…私なら、どうするんでしょうね」
知ったことではないと言いたげに、七海ちゃんは溜息をつき紅茶に手をつけた。
「考えてみてよ」
「考えた結果です」
「え〜…」
「私は五条さんほど抱えるものが多くないですし、特に何も考えずにその場の流れに任せると思います」
「それ無し!」
流れに身を任せるなんて返答はずるいと思う。
でもまぁ…。
七海ちゃんならそうするかもしれない。
私もそう思ってしまったから、思うように責められなかった。