第45章 酒の力
「貴方がそんなことを聞いてくるなんて、珍しいですね」
「そう?」
「悩むより突撃タイプでは?」
「酷い」
片眉を上げる七海ちゃん。
言葉以外で反論されては、反撃できない。
大人しく背もたれに背を預けて、1度頭をリセットした。
頭を後ろに倒せば、七海ちゃんが「今日の朝も同じような格好を見た」と言う。
そうなんだー、とありきたりな返事をしてその場は収めたが、内心では彼との共通点を知ってニヤついていた。
まぁ、誰も悟とは言っていないのだけれど。
「…悟はさ、何も教えてくれないの」
これだけ一緒にいても、私は悟の半分程しか知らないと思う。
五条家に関わること、上層部に関わること。
つまりは、悟の権力が可能とする分野について、悟は頑なに口を閉ざすから私はほとんど何も知らない。
「別にいいんだけどさ。立場的に他言無用みたいな暗黙の了解があるかもしれないから。でも…」
私が関わっていることに関しては教えてくれてもいいと思う。
初枝さん達に会いに行った時も直前に言われて、それは伝える暇がなかったという理由で流されたと記憶されているけれど、きっとずっと前から本家に一緒に顔を出すことは考えていだと思う。
でも、そんな話をされた覚えはない。
「本家に一緒に行きたいと思ってるんだよねー」という言葉くらいあっても良かったのでは。
それに、暗殺の話だってもう少し早く話してくれても良かったと思う。
それは私が知りたいということではなくて、恋人の殺害予告でもある暗殺の依頼を1人で抱えて欲しくなかった。
現実的に不可能だけれど、もし悟の暗殺の話が私の元にきたとすれば、私は恋人が殺しの対象になっていることに色々な感情が湧き出て正気でいられないと思う。
その依頼を断れば他の人の元へ行くと思うし、それはそれで常に緊張が途絶えず安心できないだろう。
昔からやけに私が1人で外出することに対して敏感な人だったけど、それがこの暗殺計画による心配だと知っていたら、不要な外出は控えて、いらない喧嘩も減っていたと思う。