第44章 修復 可・不可
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「亡くなった人達は置いといて…。今1番危ういのは」
硝子は隣にあるベットの上の膨らみを撫でた。
「今すぐ大きな病院に連れていくことを勧める」
「そんなに、か」
「…いくら千夏でも、2度と動けなくなるかもしれない」
自分の手には彼女のイメージに合うと思ってプレゼントした髪飾り。
「しょ…こ」
「ん?」
「…ごめ…ね」
「…アンタは悪くない。まずは自分の体を心配しな」
硝子はここから離れられないと言って、先程から他の者に軽傷の手当てを任せていた。
いつもなら彼女のわがままを叱るところだけれど、今は見ないふりをする。
1ヶ月ほど前に千夏が昏睡状態になった時もそうだが、怪我をほとんどしていない自分が痛い気持ちになる。
15.、6の千夏が以上に健康であったこともあるのだろうけれど、最近の千夏は怪我をしすぎているからかもしれない。
千夏を見つけたとき。4人の倒れた人間の中心に千夏が座り込んでいた。
その手は血にまみれていて、顔を上げた彼女の瞳は充血し、焦点の定まらない浮ついたものであった。
「動かないで」
「ん…大丈夫」
少し動くだけで激痛が走るというのに。
千夏は誰の手も借りず、体を起こす。
「私、大丈夫だから…」
まるで自分に言い聞かせるように、そう繰り返した。
「千夏。医師として…」
「大丈夫。我慢、できるから」
「そういう問題じゃなくて…!」
腕を一切動かすことなく、ぎこちない足を床につける。
俺はその様子を瞬き一つせず見ていた。
「硝子…」
「立てないでしょ。無理すんな」
「ぎゅってして」
「…何。私が?」
「うん」
2人の仲が良いのは知っていたが、2人の性格は真反対と言っても過言ではなく、同学年の同性がお互いのみだったことが2人を近づけたのだろう。
それは彼女たち自身も認めていて、普通の学校で出会っていたら、まず関わらなかっただろう、と…。
そしてそれと同時に、だからこそこの関係を大切にしたいと、彼女たちは見つめあいながら言ったのであった。