第44章 修復 可・不可
何も不思議なことではない。
私の術式では静電気を操ることが出来る。
これが本質である術式ではないが、今回のように各扉の前に電気が溜まった塊のようなものをイメージしてその時まで放っておけば、その塊と元の中性的な電荷が平衡状態となる。
そして、一気にその塊を消してしまえば電荷の偏りが起きて、偏ったもの同士が反発、または引き合う。
それを上手く利用すればドアなんか簡単に開く。
難点といば、その作業には多大なる集中力とある程度の時間が必要なこと。
「…ったい」
そして、今の私は何故か呪力に嫌われているため、身体中に激痛が走る。
初めての痛みでは無いために、自分の体に何が起きているかは予想出来ている。
だから、未知の痛みでないだけマシだった。
(ありゃ…これは…怒られちゃうなぁ)
体の痛みを労るのも良いけれど、それよりもっと大変なことが起きていた。
建物の扉が壊れているではないか。
今回の試みは初めての挑戦だったことを言い訳としても、細かな扱いをしたつもりだ。
と、まぁ。
形あるものはいつか壊れる。
今はとにかく痛む体を動かして偵察しよう。
「あれ、何でここに?」
見覚えのある顔がこちらを振り返る。
84個目の建物の中では人が殺されていた。
憤怒しそうになるのを抑えて落ち着いて奥に進むと、こいつが笑顔で私に手を振ってきたのだ。
「それはこっちのセリフ。何してんだよ」
「それは内緒!まさかここで会うなんて、想定外だなぁ」
太腿につけていた武器を取り出して、一気に攻め込む。
「彼を殺したのはお前か!?」
「あ、入口の?そうそう、僕が殺したんだよー。怒ってる?」
「っ…!」
とくん。
血液が異常な熱を帯び始める。
命をなんだと思っているんだ。
命は未来なのに…!!
怒りで痛みなど気にはならなかった。