第44章 修復 可・不可
*****
「くしゅん…」
水辺から吹いてきたひんやりとした風に煽られ、少し身震いした。
ここには全く陽が降り注いでいないから、夏にも関わらずとても寒い。
夏ならではの軽装であるのも原因だ。
(体が冷えるのはマズイな…。日向に行こう)
体が固まれば、その分だけパフォーマンスが落ちる。
二の腕を擦りながら、とぼとぼと歩き始めた。
と、その時。
「はぁゃ…!?」
体が勝手に動き出した。
動き出したというか、体が勝手に移動している。
「なっ…はぁ!?」
足から背中までを何かに支えられ、そのまま押し退けられ続けている。
途中の障害物に挟まりかけることもあったけれど、圧死は何とか避けられた。
「ちょ、待って…」
目に見えぬ何かに押され、あっという間に元いた場所から数百メートルの位置まで移動させられた。
(なん、だったの…?)
パニック状態から抜ける前に謎の攻撃(?)は終わりを迎え、私は戸惑いながら自分の体を確認した。
体には特に異常は見られず、通ってきた道の木々や岩は破壊されることなく、私が足を引きずって作った道だけがくっきりと残っていた。
(とりあえず…ん?)
元の場所に戻ろうと踵を返したが、それ以上前に進めない。
「痛っ」
体が静電気のような衝撃と共に跳ね返される。
何度やっても同じ結果だった。
「何でよっ…!」
私が電撃を無視して何度もみえぬ壁を叩き続けていると。
ホネホネの消滅が体に伝わってきた。
つまり、ホネホネの消滅と共に彼の体にあった札が消えたということ。
(準1級レベルを…倒した?)
東堂葵…棘…メカ丸。
ぱっと思いつくのは、そこら辺だろうか。
まさか悠仁が?
もしそうであるならば、悠仁が今まだ何をしていたかは知らないけれど、成長速度が想像の範疇を超えている。
それに、ホネホネを捕獲するときの苦労をいい意味で踏みにじられたことになる。
とにかく、ここでじっとしていても仕方がない。
冥冥さんに電話をして現状を説明しよう。