第44章 修復 可・不可
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冥さんはカラスと視覚を共有することができる。
カラスなんてどこにでもいるから、こういう時に冥さんの力は役に立つ。
でもまぁ、そこに恣意的な操作があった場合、厄介であることは言うまでもない。
「ぶっちゃけ冥さんってどっち側?」
「どっち?私は金の味方だよ」
金、ねぇ。
『冥冥さん、酷いんだよ?私のこと、金にならないかって言ってバイバーイ、って…』
以前、千夏も一時期切り捨てられて文句を言っていた。
千夏がどうして金になるのか。
僕には想像できないけど、ね。
「いくら積んだんだか」
何を企んでるかは知らないけれど、もう簡単にどうこうされる悠仁ではない。
おじいちゃんの思い通りにはならないよ。
その後、試合に本来らしい動きが出て。
ふと疑問に思った。
「冥さん」
「なんだい?」
「千夏はどこで何してる感じ?」
ここにいないということは向こう側にいるのだと思っていたけれど。
一体何をしているのか。
千夏のことだから電撃参戦してもおかしくないけれど、参戦している様子はない。
「さぁ。あの子が考えることを当てられるとでも?」
「なるほどね」
冥さんも悪い人だ。
というか、今回の交流会に冥さんと千夏を関わらせた時点でthe end。
呪霊を倒すと燃えるこの札だって千夏が作成したものだし、試合の進行状況の把握は冥さんの監視に委ねられる。
もし千夏達に何らかの企みがあり、この交流会を利用されているとしたら、僕達はいいカモだ。
そんなリスクを負いながらも、学長らが全くそのようなことを危惧していないのは、信頼がある故。
冥さんは金にしか興味無いが、千夏は違う。
情を頼りに決断を決める女だ。
(裏切ってくれるなよ、千夏)
例のビジネスのために動いているのか、好奇心で動いているのか。
正直何をしてくれても構わない。
自由に動いてくれて結構だ。
でも、何らかの情で1年前のように高専…そして生徒達に危害を加える選択をするのなら。
僕は本気で止めに行くよ。